河合塾『魅力発見BOOK東北大学』2019より

「人工知能(AI)の学習」から人間にとって本当に大切な「学び」とは何かを探究する

高校時代は放送局志望でテクノロジーへの関心が高かったことが、教育心理学者としての研究テーマに。研究成果は書籍として積極的に公開。多くの大学の入試問題に採用されている、その書籍の著者が渡部信一教授だ。

「ロボット開発」と自閉症教育を結び三陸沿岸の伝統芸能保存にも貢献

私は最新テクノロジーの活用という視点から、人間にとって本当に大切な“教育”および“学び”とは何かについて探究しています。これまでの研究テーマを挙げると、1990年代は「最先端の“ロボット開発”という視点から“自閉症教育”についての探究」です。誤解されることが多いのですが、これはロボットを自閉症教育に活用するのではなく、自律的に学習するロボットの開発と、障がいを持った子どもたちの教育とを比べながら、子どもたちの学ぶ力を引き出していく教育について研究しました。続く2000年代は「最先端のWeb環境という視点からカウンセリングや大学教育についての探究」。これはネット環境を使った不登校児などのカウンセリングや大学教育でのeラーニング、オンライン講座などを対象に、「デジタル環境の中で、コミュニケーションをベースにした教師と生徒との人間関係をどうつくれるか」にポイントを置いた研究です。

また、モーションキャプチャなどを活用した日本の伝統芸能や芸道の教育・継承の支援についても研究しています。若い世代への教育にデジタル教材が効果的ではないかと考えて始めたものですが、ちょうどその頃に東日本大震災が発生。三陸沿岸の伝統芸能が失われる危機に直面したことから、この研究にスポットが当たり、その保存や教育・継承にも貢献しています。

最新テクノロジーで、日本の伝統的な「学び」を探究する(「伝統芸能」のデジタル教材)。

大学院生が小学校で行われているレゴ・ロボットの授業を体験。それをどう発展させるかを考えたり、また、それを自分の研究に結びつける。

人工知能の自律的な学習から探る人間の「主体的・対話的な学び」

現在は「人工知能の学習」という視点から、人間独自の学びや教育について、人工知能の研究者と共同研究を行っています。今、文部科学省から「主体的な学び」や「アクティブラーニング」などと言われていますが、教育現場では具体的にどうしたらいいのかわからずに混乱しています。その具体的なヒントを探るために人工知能の自律的な学習や、人工知能同士の学び合いについて探究。同時に、近く到来するだろう人工知能社会における“人間だけが持つ強み”を解明できるのではないかと考えています。

「人間が本来持っている学ぶ力を育成するために、どういう教育が必要か」――それを探究するのが私の一貫したテーマで、主体は子どもたちの「学び」、教育にあります。そのヒントを人工知能の学習に求める、という感じですね。また人間側の研究で明らかになったことは、新たな人工知能の開発にも役立つだろうと思っています。

「人間とは何か」という哲学的なテーマを扱いながら、文献研究だけでなく、テクノロジーを使い、現場に出向いて研究を進めるのが、私の研究室のスタイル。学生には「現場で起こっていることを自分の眼で確かめ、自分の心で感じながら研究を進める」ことを指導しています。

東北大学を目指す高校生の皆さんへ

私は若い頃、福岡教育大学で教師志望の学生を指導した経験があります。教員養成大学では「学校教育」に的を絞った研究・教育をします。しかし、東北大学教育学部では「学校教育」に限定することなく、「教育」の様々な領域に関する研究・教育を行います。これからの日本は少子高齢化や外国人労働者の増加、そしてAIが浸透した社会の出現など、様々な「変化の時代」を迎えます。このような時代のなかで、どのような「教育」あるいは「学び」が必要なのか、皆さんの若い感性を活かしながら探っていってほしいと思います。


大学院 教育学研究科・教育学部教育情報アセスメントコース 渡部信一 教授

1981年、東北大学教育学部教育心理学科卒業。1983年、東北大学大学院教育学研究科博士課程前期課程修了。
教育学博士(東北大学)。福岡教育大学、東北大学大学院教育情報学研究部・教育部(大学院独立研究科)などを経て現職。

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